キックボクシングに筋トレが必要な理由
キックボクシングは階級制の競技のため、「筋肉を付けると減量が苦しくなる、スピードが落ちる」との理由から筋トレ不要論があった。
しかし昨今、筋肥大を最小限に抑え、筋力だけを上げる方法が科学的に証明されており、筋トレを練習メニューに取り入れるプロ選手も増えてきた。
今や筋トレは、キックボクシングで勝つために欠かせないトレーニングと言っても過言ではない。
キックボクシングで鍛えるべき筋肉
「ある筋肉を鍛えたら強くなれる」というほどキックボクシングは簡単なものではない。
キックボクシングに必要な筋肉は「全身」である。たとえば、パンチ力を上げるだけでも、脚・腹・背中などいくつもの筋肉を鍛える必要がある。一部でも筋力が弱いと、拳や脚にしっかり力が伝わらない。
とはいえ、「どこを重点的に鍛えたらいいか?」と問われたら、まず鍛えるべきは「下半身の筋肉」である。
下半身が強くなると土台である体が安定し、強いパンチやキックが打てるようになる。また、打ち合いの中での踏ん張りが効くようになり、押し負けることも少なくなる。
キックボクシングに効果的な筋トレメニュー3選
先述したようにキックボクシングでは全身の筋力が必要であるため、マシンのような部位特化のトレーニングではなく、全身を連動させたトレーニングが有効となる。
また、キックボクシングに効果的な筋トレは「筋力アップ」のトレーニング。筋肥大は体重が増えてしまうため、減量が必要な選手にはおすすめできない。
筋力アップにおける筋トレのセオリーは「高負荷・低回数」。1回〜5回しかできない強い負荷で3セット行うのが基本である。
ちなみに、筋持久力は筋トレでつけるのではなく、ミットやサンドバッグでの追い込みが最適である。
①バーベルスクワット
バーベルスクワットにより下半身を鍛えることでパンチ・キック力のアップ、押し負けない強い体をつくることができる。
✓ バーベルスクワットのやり方
- 肩幅よりも広い手幅でバーベルを持ち、バーベルを肩に乗せる
- 足を肩幅に開き、バーベルの真下に足の土踏まずがくるようにセット
- しっかりと胸を張り、つま先と同じ方に膝を曲げる(目線は固定し首を動かさない)
- 太ももと地面が平行になるくらいまで腰を落とす
- お尻の筋肉を意識しながら元の状態に戻る
✓ 効果的に効かせるコツ
- 上半身は真っ直ぐをキープ
- 上半身を少し前傾させる
- 下ろす時はゆっくり、上げる時は早い動作で行う
回数の目安は1~5回できる負荷がベスト。体重の3倍まで上げることができれば上出来といわれる。
②ワイドグリップ・チンニング(懸垂)
ワイドグリップ・チンニングにより背中を鍛えることでパンチ力のアップにつながる。
✓ ワイドグリップ・チンニングのやり方
- バーを肩幅より1.5程度広く順手で握りぶら下がる
- 胸を大きく突き出すように胸を張り、肩甲骨を寄せるようにして背中の力で体を上げる
- できるだけ顎や胸の上部につくまで体を引き上げる
- ゆっくりと肘を伸ばして体を下げていき、スタートポジションに戻る
- 上記の動作を繰り返す
✓ 効果的に効かせるコツ
- 足を後ろで組むと姿勢が安定しやすい
- 常に胸は大きく張ったまま背中を反る意識
- 可動域をすべて動かす(フルレンジ)
回数の目安は1~5回できる負荷がベスト。5回以上できる場合は、ディッピングべルトを使って負荷を強くする。
③ハンギング・レッグレイズ
ハンギング・レッグレイズは腹のトレーニングだ。腹を鍛えることでパンチ・キック力のアップ、ボディの耐久力アップにつながる。
✓ ハンギング・レッグレイズのやり方
- 自分の足がつかない鉄棒やチンニングマシンをしっかりと握って、体を下げる
- 腕には力を入れず、支えることだけを意識
- まっすぐと伸ばした足を、体で90度を作るように上げていく
- 体で90度を作ることができたら一度停止
- 停止した後ゆっくりと下げていく
✓ 効果的に効かせるコツ
- 上半身(特に腕)に余計な力を入れない
- 体が振り子のように動かないよう少しお尻を下げる
- 反動を使わない
回数の目安は1~5回できる負荷がベスト。5回以上できる場合は、アンクルウェイトを使って負荷を強くしていこう。
キックボクシングに筋トレを取り入れる時の注意ポイント
筋トレはあくまでキックボクシングのパフォーマンスアップのための補強。
筋トレの頻度は「週1」程度でOK。毎日の筋トレはキックボクシングのトレーニングの質を落とすことになりかねないので注意が必要だ。
また筋トレのあとは筋肉が激しく損傷しているので、ストレッチや適切な栄養補給を心がけてほしい。
キックボクシングと筋トレの順番
筋トレの順番としては、キックボクシングのトレーニング後に行うのがベターだ。先に筋トレを行ってしまうと、筋肉が疲れ切った状態になってしまい、可動域も狭くなってしまう。ベストパフォーマンスが出せる状態でキックボクシングのトレーニングを行い、そのあと補助として筋トレを行うのがいいだろう。
または、キックボクシングと筋トレの日は分けてもOKだ。キックボクシングのトレーニングで疲れた状態では筋力もMAXを出しづらい。私の場合、週6キックボクシングのトレーニング、週1筋力トレーニングを行っていた。