
筋トレ後の酒が最高なんだけど、やめたほうがいいかな?
「筋トレをして身体の大きい人はお酒も強そう!」なんてイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
実際に、筋肉量の多い人ほどアルコールに強いことは科学的にも裏付けされています。
理由としては、アルコールが分解されていく過程で酢酸になり、この酢酸を分解するのが筋肉の役目なのです。
つまり、筋肉量が多い人ほど、酢酸を多く分解できるため、アルコール処理能力が高いと言えます。
しかし、筋肉を効率的に強くしたいならアルコールの摂取はオススメできません。
2014年にオーストラリアのRMIT大学が発表した論文では「筋トレ後のアルコール摂取は筋肉の合成を37%低下させる」ということが明かになりました。
筋肉の合成が37%低下する
アルコールは体内に入ると、胃や腸から血液に吸収され、肝臓へと運ばれます。
ここでアルコールのおよそ9割が、アセトアルデヒドと呼ばれる成分に代謝されます。
このアセトアルデヒドが、体にとって有害な「毒素」なのです。
肝臓は、アセトアルデヒド(毒素)の分解・無毒化を最優先で行うため、筋肉に必要な栄養素も大量に消費し、他の機能は後回しにします。
つまり、筋トレ後にアルコールを飲むと、本来タンパク質の合成に使われるはずだった分のエネルギーが、アセトアルデヒドの分解と無毒化に割り当てられることになるため、タンパク質の合成効率が下がりやすくなってしまうのです。
また、人によっては、筋繊維が部分的に壊死してしまう「急性アルコール筋症」と呼ばれる症状が起こることがあります。
これは、アセトアルデヒドを分解する過程で水やビタミンなどの栄養素が大量に消費されることが原因で、タンパク質の合成にまで手が回らなくなり、結果的に筋肉を維持するために必要なタンパク質すら不足してしまうという症状です。
アルコール摂取の悪影響は他にもある?
他にもアルコールが与える悪影響はいくつかあるので紹介します。
筋肉を作るテストステロンの分泌量が45%減少する
厚生労働省労働局は「通常の飲酒でも、アルコールは睾丸における男性ホルモン(テストステロン)の産生を抑えてしまう」という報告をしています。
このテストステロンというホルモンは、男性ホルモンの一種で、脂肪を減らし、筋肉の合成を促進してくれる働きを持っています。
男性なら経験があるかもしれませんが、お酒を飲みすぎると、せっかくいい雰囲気なのに「夜の力が発揮できない」なんてことありますよね。
それは、アルコールの飲みすぎでテストステロンの分泌が低下しているのが原因です。
アルコールを摂取するとテストステロン値が45%減少するという研究もあります。
何もしなくても20~30歳頃から次第に低下すると言われているテストステロンですが、アルコール摂取によりこのテストステロンの分泌量が減少するとされているのです。
特にビールに含まれているホップは、テストステロンの分泌を低下させてしまいます。
ちなみに、女性の場合はお酒を飲むとテストステロンの分泌が増えるという意外な結果が出ています。
筋肉が分解される
公益社団法人アルコール健康医学協会は「中等量から大量のアルコールを摂取すると、コルチゾール値が上昇する」という報告をしています。
このコルチゾールというホルモンは、筋肉を分解し、脂肪の合成を促進する働きを持っています。
コルチゾールが慢性的に高くなると、不眠や精神疾患を引き起こしてしまいます。
ちなみに、このコルチゾールは、別名「ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレスを感じた時にも増えるホルモンです。
アルコールを制限すること自体がストレスに感じる方もコルチゾールは分泌してしまうので、お酒との上手な付き合い方が大切です。
睡眠の質が落ちる
アルコールを飲むと寝つきは良くなるかもしれませんが、朝起きた時にスッキリしていることは少ないのではないでしょうか。
アルコールが体内でアセトアルデヒドに変換されると、レム睡眠が増え、中途覚醒や早朝覚醒へと繋がってしまい、睡眠の質を下げてしまいます。
そして睡眠不足の状態では、コルチゾールの分泌が増加し、テストステロンが減少してしまうのです。
つまり、アルコールと睡眠不足のダブルで筋肉に悪影響を与えてしまいます。
体の水分量が減少する
アルコールには利尿作用があるため、アルコールを摂取すると体内の水分が排出されやすくなってしまいます。
筋肉内の水分が少なくなると、筋肉を成長させるために必要な各器官への栄養供給ができなくなります。
そのため、水分量が減ると栄養分の供給が停滞して、筋肉の合成スピードが落ちてしまい、疲れもとれにくくなります。
【対策】アルコールとの上手な付き合い方とは?
お酒にはリラックス効果があったり、コミュニケーションを潤滑にする役割もあるため、中々切っても切り離せないのが実情です。
先述したコルチゾールのように、アルコールを我慢してストレスを溜めてしまっては身体によくありません。
お酒とはバランスを取りながら付き合っていくことが大切です。
では、筋肉に影響の少ないアルコールとの付き合い方はどうすればいいのでしょうか。
どの種類を選べばいい?
お酒は製造方法によって「醸造酒」と「蒸留酒」に分けられます。
糖質や不純物の入った醸造酒は肝臓の負担を重くしますが、製造過程にひと手間加え、不純物を取り除いた蒸留酒は肝臓の負担を減らすことができます。
肝臓への負担を減らせば、血液を筋肉回復に回すことが出来るようになるのです。
また、蒸留酒は醸造酒に比べ有害物質であるアセトアルデヒドの分泌量も少なくなります。
蒸留酒の代表例
ブランデー、焼酎、ウイスキー、泡盛、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラなど
醸造酒の代表例
ビール、ワイン、日本酒など
どのくらい飲んでいい?
いくつか研究がありますが、体重×0.5gまでのアルコール量であれば、テストステロンへの影響が見られないと報告されています。
たとえば、体重70㎏の人なら35gのアルコール量であれば大丈夫ということです。
500mlのビールには20gのアルコール量が含まれているので、1杯半ぐらいなら筋肉への影響は少ない、と考えていいでしょう。
また、お酒を飲む際は、水も一緒に置いておくと、飲酒量を調整しやすくなります。
脱水に対しても水で補うことができ、肝臓への負担も軽減できるのでオススメです。
目安としては、飲んだ量の1.5〜2倍のお水を飲みましょう。
適切な範囲を守ることは、筋肉の維持だけではなく生活習慣病の予防にもなります。
アルコールの分解を助ける栄養素は?
「アルコールの分解する働きを助ける栄養素」や「アルコールを分解することによって失われる栄養素」を補給することで、アルコールによる悪影響を多少抑えることができます。
そのような栄養素を含む食事をツマミにしたり、面倒くさい方はサプリメントを上手に利用しましょう。
補給するべき栄養素は以下です。
プロテイン
プロテインに含まれている「ロイシン」には、肝機能を高めてくれ、血糖値を調整してくれる働きがあります。
また、ホエイプロテインの中には、アルコールの分解・代謝時に体内で失われやすい「ビタミンB群」や「ミネラル」も豊富に含まれています。
2014年にオーストラリア・RMIT大学が出した論文によれば、「お酒を飲む2時間程度前や飲んだ後にプロテインを飲めば、筋肉の合成を最大24%ダウンまで抑えることができる」ということが分かっています。
プロテインは、飲みやすくするために大量の人工甘味料が入っていることが多いので、健康のためには人工甘味料なしのプロテインがおすすめです。
しかし、人工甘味料なしのプロテインはそのままでは正直飲みにくいので、ココアパウダーなどを入れたら飲みやすくなると思います。
ナイアシン(ビタミンB3)・ビタミンC
「ナイアシン(ビタミンB3)」には、アセトアルデヒドを分解する力があります。
ナイアシンを含む代表的な食材は、レバー・カツオの刺身・エリンギ・ピーナッツなどです。
「ビタミンC」には、アルコール分解に重要な酵素の働きを助ける役割があります。
ビタミンCは果物や野菜に多く含まれます。
他のビタミンにも健康にいい作用があるので、私は毎日マルチビタミンを摂取しています。
オルニチン
「オルニチン」には肝臓の代謝や解毒作用を助ける役割や成長ホルモンの分泌を促す働きもあります。
オルニチンを含む代表的な食材は、しじみが有名ですが、キノコにはしじみの5〜7倍オルニチンが含まれているためキノコの方がオススメです。
ウコン(クルクミン)
ウコンに含まれるクルクミンには、アセトアルデヒドを分解する力があります。
このウコンに関しては飲む前だけでなく、飲んだ後に摂取することでも効果があります。
飲み会前にコンビニなどで「ウコンの力」などのドリンクを飲むといいでしょう。
カテキン
緑茶に含まれるカテキンには、アセトアルデヒドを体外に放出し、二日酔いを防いでくれる力があります。
水分補給はできるだけ緑茶を飲むようにしてください。
まとめ
筋トレ後にアルコールを摂取すると、筋肉の合成効率を低下させ、筋肉を分解してしまう可能性があります。
さらに、アルコールは体脂肪の増加や病気リスクに大きく影響します。
お酒を飲まないに越したことはありません。
それでも、付き合いで飲まなければならない場合もあるでしょうし、お酒を我慢するにしても、ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌されるのでは、いずれにせよ健康ためにはなりません。
お酒も筋トレも両方楽しみたい方は、蒸留酒を選んだり、飲む量やツマミを調整することでお酒と上手に付き合いましょう。
ちなみに、女性はアルコール摂取による「筋タンパクの合成率」や「テストステロン値」に変化は見られなかったので、女性はお酒による「筋肉」への悪影響は気にしなくていいようです。